・イラクとイランって何が違うの?
イランとイラクの違いがちゃんとわかってる日本人ってどのくらいいる?
英国在住の私は語学学校や教会のイベントでよくイラン人に出会います。
でも会う度に出身がイランだったかイラクだったか混乱。さらにシリア経由で難民移住している家族もいて、さらにカオスを感じます。
イランとイラクは、その名前があまりにも似ていることで、日本人だけでなく世界中の人の頭を混乱させています。
この記事ではイランとイラクの両国の違いをすっきりと解決!
記事を読んだあとには「イラクとイランってこんな違いがあったんだな」と理解できるようになっています。
記事を書いているのは、在英歴10年のアルノです。今後の政治、経済など国際ニュースやモスリムの知人の理解、世界情勢を考えるさいに役立ちます!
イラクとイランの違い一覧表
地図上ではお隣の国である「イラク」と「イラン」。
両国とも石油の産出地ランキング トップ10にはいる産油国でもあり、国教はイスラム教」など共通点も多い国ですが、両国の間では「イランイラク戦争(1980~88年)」の戦いの歴史もあります。
両国の特徴や違いを一覧で見てみましょう↓
(正式名) | 国名(イラン・イスラム共和国) | イランイラク (イラク共和国) |
---|---|---|
国の位置 | 西アジア大陸 | アラビア半島 |
首都 | テヘラン | バグダット |
面積 | 41180000 km² (日本の約1.2倍) | 1,648,000 km² (日本の約4.4倍) |
古歴史 | 古代メソポタミア文明 ペルシア帝国(紀元前6世紀~) | 古代メソポタミア文明 |
公用語 | ペルシア語 | アラビア語、クルド語 |
民族 | ペルシア人(61%) アゼリ人(35%)、クルド人(10%)等 | アラブ人(80%~) クルド人(約2割│多くはスンニ派)、トルクメン人、アッシリア人等 |
宗教 | ・イスラム教80%以上 (シーア派90%、スンニ派9%) ・キリスト教など | ・イスラム教99% (シーア派約60%、スンニ派約30%) ・キリスト教など |
原油生産量 | 世界第5位 | 世界第10位 |
大統領 | エブラーヒーム・ライースィー(第8代大統領) ・2022年女性のヒジャブ(スカーフ)の着用方法に問題があるとして逮捕→その後死亡の事件をうけ抗議活動が活発化。抗議に参加した一般人の処刑が国際問題へ発展 | サダム・フセイン(第5代大統領│スンナ派) ・イランイラク戦争(1980~88年) ・湾岸戦争(1991年) ・イラク戦争(最期はアメリカ軍に捉えられ死刑となる) |
ちなみに、2022年の産油国世界ランキングはこちらです↓
ランキング | 国 | |
1位 | アメリカ | |
2位 | ロシア | |
3位 | サウジアラビア | |
4位 | カナダ | |
5位 | イラク | |
4位 | 中国 | |
7位 | アラブ首長国連邦 | |
8位 | ブラジル | |
9位 | クウェート | |
10位 | イラン |
ちなみに日本の原油輸入相手国は、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、イラクで80%以上、中東依存度は90%以上です
イラン(Iran)ってどんな国?
イランの基本情報を紹介します。
- 国の位置:西アジア大陸
- 首都:テヘラン
- 歴史:ペルシア帝国
- 人口:約86,000,000(世界第17位)
- 言語:ペルシア語、アゼルバイジャン語、クルド語、ロル語など多数
- 民族:ペルシア人(61%)、アゼルバイジャン人(35%)、クルド人(10%)等
- 一人あたりのGDP:$5,902(世界第28位)
- 宗教:イスラム教90%以上(90%がシーア派、9%がスンナ派:多くがトルクメン人、クルド人とアラブ人)
- 面積:1,648,195 平方キロメートル(世界で18番目に大きい│日本の約4.4倍)
イランという国は、私達日本人が想像しているより発展した豊かな国であり、深い歴史と多様な民族、文化、美しい自然を持つ国です。
人口も世界の上位ですね。
イランを歴史的に見てみると、1934年まで「ペルシャ」という国でした。
古代礼賛の影響をうけ国名が「イラン」へ改定されたのです。
日本人にはたぶん「イラン」の古代は「ペルシャ」という国だったということを頭にいれておくと、理解が深まります。
古代にはメディアン、アケネス朝ペルシャ(紀元前5世紀)、セレウコス朝、パルティア帝国に統治されていました。
その後、アラブ、モンゴル、トルコなどの異民族の支配を受けつつもペルシャ人としてのアイデンティティーは保持。
第二次世界大戦後の1925年に独裁政権パーレヴィ朝が成立(アメリカが支援)。
1979年、ホメイニ師の指導のもとイスラム革命により現体制となっていきます。
イラン・イラク紛争(1980年9月~1988年8月)、ホメイニ師逝去後、ラフサンジャニ政権など、以後さまざまな政権が発足。アメリカとは対立関係にあります。
現在は、エブラーヒーム・ライースィーが第8代大統領となっています。
・2022年女性のヒジャブ(スカーフ)の着用方法に問題があるとして逮捕→その後死亡の事件をうけ抗議活動が活発化。抗議に参加した一般人の処刑が国際問題へ発展しています。
イランはペルシャ人の国で、歴史も文化度も高く、非常に豊かな中東の国です。アメリカとの対立が深刻化しています。
イラク(Iraq)ってどんな国?
イラクの基本情報をくわしく紹介します。
- 国の位置:アラビア半島
- 首都:バグダット
- 歴史:古代メソポタミア文明、イギリス帝国統治時代あり、アメリカによる政治・軍事介入あり
- 人口:41,180,000(世界第36位)
- 言語:アラビア語、クルド語
- 民族:アラブ人、クルド人(約2割,多くはスンニ派)、トルクメン人、アッシリア人等
- 宗教:イスラム教99%(シーア派約6割、スンニ派約3割)、キリスト教
- 最大勢力:シーア派
- 面積:43.83万平方キロメートル(日本の約1.2倍)
- 資源:世界で5番目の原油埋蔵国
イラクは、イギリス統治時代を経てイラン・イラク戦争、湾岸戦争、サダム・フセインによる統治、アメリカの政治的・軍事的介入を受けた国です。
現在でもイスラム教のシーア派とスンニ派、クルド、過激派ISILなど国内の争いがくすぶり混乱が続いています。
イラクを歴史的にみてみると、紀元前6000年頃から古代メソポタミア文明が栄えました。
766年アッバース朝がバグダッドを首都としイスラム文化が興隆。
その後はオスマン・トルコ帝国などの非アラブによる支配をへて、1920年からイギリスの委任統治を受けました。
1932年にファイサルを王とする王国としてイギリスより独立。
1958年の共和国革命などを経て1979年にはサダム・フセインが大統領に就任。
フセイン政権の下、イラン・イラク戦争(1980年9月~1988年8月)、クウェート侵攻(1990年8月)、湾岸戦争(1991年1月~2月)がおこりました。
2003年3月にアメリカによるイラクへの武力行使が開始され、フセイン政権は崩壊!
この石油をめぐる湾岸戦争からイラク戦争の間に100万人のイラク人が死亡したといわれています。
その後2004年にイラク暫定政権へ主権が移譲され、2006年にシーア派の政権が発足し、イラン共和国が再誕生(マーリキー政権)。
2010年アメリカ軍が撤退!
しかし、イラクの政権は迷走しており、アブドルマフディ政権、新政権ともにイラク国内の混迷はつづき、内戦は長く続いています。イスラム過激組織「ISIL(自称イスラム国)」など問題は山積!
2022年シーア派の有力指導者ムクタダ・アル・サドル氏の政界引退宣言をうけてから、イラクは深刻な政情不安が続いています。(シーア派内の勢力争いといわれている)
イラクはアラブ人の国で、未だに政治が不安定で、多くの民族対立がくすぶっている国です。
イラクとイランの違いは?違いの覚え方
イラクとイランは、国が近く、名前が似ているという理由で日本人だけではなく世界中の人々を混乱させています。
しかし、調べてみると、文化も民族も国の豊かさなどもまったく違うことがわかりました。
イラク | イラン | |
民族 | アラブ人 | ペルシャ人 |
言語 | アラビア語 | ベルシャ語 |
国際的 | 米国の介入を受ける | 米国と衝突し、中国に近づく |
両国の最大の違いは、イランは多くの歴史、非常に多様な民族や文化、自然を持つ豊かな国。
イランに対し、イラクは今だ部族間の紛争がつづく民族的な緊張と不安定さを抱えている国です。
しかし、イランの最大の問題はアメリカとの政治的、軍事的衝突です。
「アメリカをイランと言ってるイラン」とおぼえましょう!
また、「イランは親日」というのも通説になっています
イラクとイランに共通することは?
- 中東のイスラム教国
- 石油産出国
イランとイラクの明確な類似点の1つは、イスラム教であるということ。
そしてもうひとつは、どちらも石油の大規模な生産国であるということ。
イランには約1,300億バレルを超える原油埋蔵量があり、イラクには約1,100億バレルが埋蔵されているといわれ、両国の産業の大部分を占めています。
石油輸出国であるということが、結果的に外国の介入を受け、政治的混乱の原因となっています。
まとめ
以上、「イランとイラクの違いがわからない!」←解決します!」について紹介しました。
アルノ的にまとめると、
- アラブ人の国イラク、ペルシャ人の国イラン
- 国として不安定なイラク、安定し豊かなイラン
- すでにアメリカの政治的・軍事的介入をうけたイラク、アメリカの介入を拒否し今まさに火花が飛んでいるイラン
- とにかく「イランにアメリカはイラン」と覚えるのがオススメ
私が通うイギリスの教会や語学学校では、イラン人の女性もよく参加します。
彼女たちも他のモスリム女性と同じくスカーフで髪を隠していますが、、前髪をだしたりピンがすごくおしゃれだったり、、他のアラブ諸国の女性とくらべると、ちょっと華やかでゆるいイメージ。
それまでの私の中のアラブ女性は、ブルカやニカブで顔まで隠している敬虔なモスリムのイメージが強かったので、「モスリムといってもいろいろあるんだな?」というくらいの印象でした。
でも彼女たちと会う度に「あれ?彼女の出身はイラン?イラクだったかな??」と迷うんです。。
たとえあなたの周りにイラン人やイラク人がいなかったとしても、
イランとアメリカの国際対立が問題になっている現代において、イランとイラクの違いを理解することは大事だと思います。
イスラム教が本当によくわからない!という人におすすめの一冊を紹介します。
▼今後、世界人口の3人に1人がイスラム教徒になると予測されています。中東の世界を理解し、どう付き合えばいいのかを考える参考になります。イランの親日は本当か?の言説ついて興味深い考察あり。おすすめ!↓
▼アメリカ留学したサトコのルームメイトはサウジアラビアの女性ナダだった!ほんわかした4コマ漫画の中で、アメリカ社会におかれたイスラム社会を感じることができる。
▼イスラム教の年間行事や祝日についてはこちらの記事を参考にしてください。
▼イスラム教、キリスト教、ユダヤ教の違いについてはこちらの記事が参考になります。
英国南西部デボンのエクセターよりお届けしました。
この記事があなたのお役にたてばうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。Byアルノ